Onkui Channel

全ジャンル対応音楽メディア

*

Pink Floyd(ピンク・フロイド)/The Dark Side of the Moon(狂気)

      2015/06/04

Amazonでアルバムを検索

iTunesでアルバムを購入

1973年に発表されたピンク・フロイドの代表的アルバム『狂気』。

ビルボード・チャートの200位以内に15年間(741週)に渡ってランクインし、カタログチャートでは30年以上(1,630週以上)に渡ってランクイン、キャッシュボックスでは233週、全英オフィシャルチャートでも354週に渡ってランクインした化物アルバム。全世界での売上枚数5000万枚、もしくはそれ以上とされており、ピンク・フロイドの人気を決定づけた作品でもある。2006年に発表された「ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・ベストアルバム500」では第43位にランクインしている。

アルバムは「コンセプトアルバム」の形態を取っており、人間の内面に潜む「狂気」をテーマにアルバム全体が制作されている。ロジャー・ウォーターズが全てを手がけた哲学的・文学的な歌詞に、心臓音・爆発音等SEの多用がされており、アルバムの最初から最後が全て繋がっている。

【『狂気』の魅力】

個人的にこの作品は「一切の無駄がないアルバム」だと思います。

全ての音、全ての楽曲がアルバムにおいて不可欠な一部分である。作品のテーマである「人間の内面に潜む狂気」をSE・歌詞で上手く表現されており、最初から最後までの流れもこれ以上はないと感じさせる程の構成。文句のつけどころが一切ない、完璧なアルバムである。

じゃあ、誰が聞いても楽しめるか?といったらそれはまた別の話。

『狂気』はコンセプトアルバムの形態を取っており、アルバム全体が一つ作品であり、個々の楽曲はその一部でしかないのです。それぞれ独立した楽曲の集合ではなく、楽曲全て合わせて一つの作品なのです。つまり、個々の楽曲は小説における「章」であり、アルバムが「作品」。個々の楽曲はあくまで全体の一部なので、その楽曲の中で起承転結が薄い場合も多々ある。たとえば、「On the Run」はずっとSEが流れている楽曲であり、この曲だけを聞いてもわけがわからないだろう。

ギネスブックに載る程のアルバムなのだから、誰しもが聞いて楽しめると思って聞いてみたら、、、、、なんじゃこりゃ!?なんてことも十分ありうる。私はその一人です

「コンセプトアルバム」という概念を知らない方にとって、楽曲がアルバムの一部でしかないという概念は理解が難しいかもしれない。普通であれば一つの楽曲内で起承転結があるのに、コンセプトアルバムではアルバム全体で起承転結させているのである。

しかし、一時期は流行したコンセプトアルバムも今ではあまり使われていない手法になっています。itunesの普及によって、楽曲が切り売りされることが一般化されているし、そもそも娯楽が多いので、「音楽を1時間ぶっ続けで聞く」ということもほとんどなくなっている。現代のライフスタイルには馴染まないのでしょうね。

しかし、優れた文学作品は読む度に新しい発見が出来るように、この『狂気』も聞く度に新たな発見が出来ます。何度も聞いて、長く付き合っていくようなアルバム。そんな作品です。

【私的分析】

「人間の内面に潜む狂気」がテーマのアルバムですが、それを音・SE・歌詞で表現しております。
しかし、歌詞に関しては文学的・哲学的な表現が多く、英語が得意でないと完全に理解するのは困難である。私もよくわからない

M1.「Speak To Me」
心臓の鼓動・レジの音・飛行機のエンジン音・人の叫び声等、SE音のみの曲。
人間を狂気に誘う物を、SE音で表現している「だけ」の曲

「コンセプトアルバム」に慣れ親しんでいないとこの時点で、早くもびっくりする。「えっ今の曲だったの?」と感じるくらいに何も起こらない曲

M2.「Breathe」
一人の人間の誕生から死までを描いている。

この世に生まれて空気を吸い、この世の中で経験することが自分の人生になる、という内容の歌詞の前半。

そして、後半部分。

社会の歯車となって働くことを、「rabbit run,dig that hole」、一つの作業が終わってもすぐ次があることを「Don’t sit down it’s time to dig another one」と表現している。

そして、この世で経験することが自分の人生を形づくるのであるからこそ、このように大きな流れに身を任せて流されていくのは、自分の魂を早死させることと以下のように歌われる。

「But only if you ride the tide and balanced on the biggest wave you race towards an early grave」

現代にも通じる歌詞です。ギターのサウンドが人生が流れていく空気を上手く表現しており、けだるい雰囲気が漂います。

M3.「On The Run」
シンセによるシーケンサーサウンド、飛行機のSEがひたすら続く「だけ」の楽曲。

空を飛ぶことへの恐怖、死に向かって行くことへの恐怖なのか、とにかく何かしらの「狂気」を表している。後のテクノミュージックに繋がるような音楽。

M4. 「Time」
歌詞の内容が最も分かりやすい曲である。いきなりブザー音が鳴り響き、びっくりとさせられる。

2分程続く前奏部が明けると、ひょうきんなメロディと、それに続いてゆったりとしたリズムにどこか哀愁漂うメロディが現れる。そして、実はこの二つのメロディは時間の流れを表している。それは歌詞を読めばよくわかる。

例えば、

「And then one day you find ten years have gone behind you No one told you when you to run, you missed the starting gun.」

ゾクッとさせられる歌詞である。

時間はいっぱいあると思い、だらだらと過ごしていたらいつの間にか10年が過ぎていた。誰もいつ走れば(頑張れば)いいか教えてくれなかった。スタートの合図を逃してしまった。という内容です。この歌詞が哀愁漂うメロディに載せられて歌われているのだが、歌詞とメロディが抜群に合っています。

さらに、

「And you run and run to catch up with the sun, but it’s sinking」

この歌詞はだらだらと過ごしたことに気づいた男が、今更ながらに動き出し追いつこうとするが、既に時遅し、、、、という内容。悲しい。

ひょうきんなメロディに載せて歌われるこの歌詞だが、このメロディはどこかせわしない。このせわしなさが、追いつこうと急いている男の感情を上手く表現しています。

この曲について、思うところがある人は多いのではないだろうか。

M5.「The Great Gig in the Sky」
歌詞からわかるように明らかに死をテーマとした曲。

女性の美しいスキャットが全編に続くのだが、そのスキャットには喜び・哀しみ・恐怖あらゆる感情が込められているように感じる。

アルバムの中でも最も美しい曲の一つ。

M6.「Money」
アルバムの中で最もポップな曲であり、実際にシングル・カットされた。テーマは題名からもわかるように「Money」。どこかふざけた曲であり、ユーモラスなベースラインはロックの歴史に残る名フレーズ。

この曲はお金に振り回されてしまう私達人間を上手く表現しています。ピンク・フロイドは音楽によってこのようなことを表現することが抜群に上手い。相変わらず、芸が細かい。途中のサックスソロ・ギターソロもスリリング。

歌詞の中で最も耳に残ったのは、

「Share it fairly but don’t take a slice of my pie」

(お金は)公平に分けろ、しかし私のパイ(お金)は取るな。だそうです。

M7.「Us And Them」
前半は明らかに戦争に関する内容だが、歌詞全体を見渡すと「人と人との関係性」をテーマにしていると思われます。

「Us and Them」:我々と彼ら
「Me and You」:私とあなた
「’Forward’ he cried from the rear And the front rank died. And the general sat and the lines on the map Moved from side to side. 」:将軍が前進を命じると前列が死んだ。そして彼は座って、地図の線が横にずれた。

人は他人との関係を「我々」と「彼ら」のように分類します。「我々」は「味方」であり、「彼ら」は「敵」である。そしてまさにこのような区別が過去に戦争を含めた争いを起こしてきた。しかし、「我々」も「彼ら」も実際は同じ人間であり、このような分類は無意味である。それにも関わらず、このようなことが実際に繰り返されてきており、それをロジャー・ウォーターズは曲の歌詞で痛烈に批判している。

そして、最後の歌詞も衝撃的である。

「Out of the way, it’s a busy day. I’ve got things on my mind. For the want of the price of tea and a slice The old man died. 」

忙しい一日であり、いろいろ頭の中で考え事もある。「tea and a slice」も買うことができない物乞いにお金を渡している暇はない。そして「tea and a slice」を食べることが出来なかった「old man」は死んだ(餓死?)。ということが書かれている。私達の他人に対する無関心を表している一節である。

この曲は全体を通して明るさがありながらどこか物哀しい。
人間は全員同じであるはずなのに、お互いを疎外し合っている現実を憂いているような曲調。

M8.「Any Colour You Like」
インストゥルメンタルの曲である。このような曲にもメッセージを持たせるのがピンク・フロイド。

「どんな選択も可能である」という意味を持たせていると思うのだが、ロジャー・ウォーターズの性格的には他にも裏の意味がありそう。。。。私には到底わかりません

長いギターソロに、多様なColourを表しているキーボードが美しい曲。

M9. 「Brain Damage」
このアルバムではずっと「狂気」に誘う諸要素がテーマに取り上げられていたが、この曲においてとうとう「狂気」に陥る男を描いています。

しかし、曲自体は美しくもある。だが、同時に終わりを告げているような気もする。

M10.「Eclipse」
前曲「Brain Damage」と繋がっており、最後の一節に全てが集約されている。

「And everything under the sun is in tune But the sun is eclipsed by the moon. 」

太陽の下では全てが上手く動いている、しかし太陽は月によって覆われる(日食)。

【まとめ】

音楽史に残るような名アルバムである『狂気』。

しかし、とてつもない売れ方をしたのに、全くポップではない。さらに、コンセプトアルバムという形式のため、現代のライフスタイルに中々馴染まない。

それでも、今後の音楽史に語り継がれることは間違いない名盤です。部屋の中で一人で、歌詞をしっかりと読みながらじっくり聞くことをおすすめします。長編の文学作品を読むような気持ちで。

歌詞と音楽の絡み合いがとにかく美しい曲です。

でも、友達とのドライブなどで聞くのはやめましょう。友達をなくします。デート時のドライブで聞くのもやめましょう。引かれます
【参考】

Wikipedia
Speak to Me歌詞分析サイト
Breathe歌詞分析サイト
On the Run歌詞分析サイト
Time歌詞分析サイト
The Great Gig in the Sky歌詞分析サイト
Money歌詞分析サイト
Us And Them歌詞分析サイト
Any Colour You Like歌詞分析サイト
Brain Damage歌詞分析サイト
Eclipse歌詞分析サイト

 - レビュー , ,

  関連記事

616ac1fakfL._SL250_
Who’s Next(フーズ・ネクスト)/The Who(ザ・フー)

Amazonでアルバムを検索 iTunesでアルバムを購入 最高傑作との呼び声も …

no image
「グレイトフルデッドにマーケティングを学ぶ」

「グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ」と題されたこちらの書籍。 グレイト …

hiromi-voice
Voice/上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト feat.アンソニー・ジャクソン&サイモン・フィリップス

Amazonでアルバムを検索 iTunesでアルバムを購入 ■またしてもサプライ …

no image
スクール・デイズ(School Days)

スクール・デイズ(School Days)とはスタンリー・クラークが1976年に …

hiromi-move
Move/上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト feat.アンソニー・ジャクソン&サイモン・フィリップス

Amazonでアルバムを検索 iTunesで曲を購入 ■前作との比較 前作『Vo …

no image
【ネタバレ感想】『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』は完全なる。。。

とうとう公開、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』 『スター・ウォーズ/フォース …

no image
Bass Ackwards(ベース・アクワーズ)

Bass Ackwards(ベース・アクワーズ)とは、超絶ベーシストであるブライ …