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Jaco Pastorius(ジャコ・パストリアス)「ベース界の革命児」

      2015/01/29

ジャズ・フュージョン界で活躍し、革命的なベースプレイにより後のベーシストに多大なる影響を与え続けている、Jaco Pastorius(ジャコ・パストリアス)

1975年に発表されたパット・メセニーのリーダー作である「ブライト・サイズ・ライフ」に参加し、1976年には自身のソロアルバム「ジャコ・パストリアスの肖像」でベース界に残る名作を発表、その後はジョー・ザヴィヌル率いるウェザーリポートに参加している。

主な活動は自身のソロ活動とウェザーリポートでの活動だが、その他にもジョン・マクラフリン、トニー・ウィリアムズ、ジョニ・ミッチェル、ハービー・ハンコックなどのアルバムに参加している。

プレイスタイル

革命的なベースプレイでその後のベーシストの在り方を根本から変えたと言っても過言ではない。

ジャコ・パストリアス登場以後、特にジャズ・フュージョン界では彼の影響を受けていないベーシストを探すほうが難しい。マーカス・ミラーリチャード・ボナアドリアン・フェローヴィクター・ウッテンヴィクター・ベイリーなどのトップベーシストもジャコからの影響を公言している。その他にもジャズ・フュージョン界は右を向いても左を向いてもジャコのフォロワーばかりである。

それ程にジャコ・パストリアスのスタイルというのは当時の時点で完成されていた。

ジャコ・パストリアスは超絶的なテクニックでよく注目される。しかし、ジャコ・パストリアス以前にもニールス・ペデルセンなんかは超絶的なベースソロを既に披露していた。ジャコ・パストリアスは超絶的なテクニックを持っていたが、それだけだったらここまで後世に影響を残してはいない。そもそも、現代ベース界ではジャコ・パストリアスを凌駕する超絶技巧を持っているベーシストはいる。それでも、ジャコ・パストリアスは今でもベーシストの憧れであるのには、超絶技巧以外の理由があるわけです。

それでは、具体的にジャコ・パストリアスのベースの何が革新的であったのか。ジャコ・パストリアスは、リズム楽器としての役割を担っていたベースの、アンサンブルにおける立ち位置を根本から覆して、その可能性を広げたのである。

ジャコ・パストリアスのベースを聞けばわかるのだが、彼のベースのアンサンブルにおける役割はリズムを支えることだけではない。彼のベースは唄ってもいる。

フランク・シナトラのメロディラインをベースでコピーしていたジャコ・パストリアスは、そもそもベースを弾く上での発想が他のベーシストとは一線を画するのである。

リズムを支えながらも、ウワモノの如く曲に彩どりを与える役割を担い、「Teen Town」に見られるように曲のメロディ自体をベースで弾くことさえある。

ジャコ・パストリアスのベースは、「低音を支える役割」というベースの仕事を、大きく拡張した。ジャコ・パストリアス登場以後、ベースを制限する固定的な役割というのは取り払われて、無限の可能性が広がったのである。ベースはウワモノ楽器のように曲を装飾してもよいし、なんなら曲のメロディもベースが弾いてもよい。音楽さえ成り立っていれば何をやってもいいという可能性をベース界に開いたのである。

超絶テクニック

速弾きが得意であるジャコ・パストリアス。「ジャコ・パストリアスの肖像」で聞かれるDona Leeは多くのベーシストの世界観を変えたと思います。他にもウェザーリポートではPort of EntryやTeen Town、Punk Jazz等数々の曲で速弾きを披露している。今聞いても大変高水準な速弾きプレイであり、その上で音楽的でもある。また、音の立ち上がりが早く、音粒もはっきりとしており、指弾きによるピッキングは大変正確である。ベースソロにおけるテクニック、バッキングにおけるテクニック、双方とも突出しており、当時の時点で完成度が高い。

しかし、ただ単に速く弾くベーシストはいくらでもいます。

ただし、サウンド、グルーヴ、フレージング、全てがかっこ良い上でテクニックも素晴らしいベーシストは中々いない。ジャコ・パストリアスはこれらが全て揃っている。だからこそ、今でもベーシストはジャコ・パストリアスを研究するのである。

奏法

2フィンガーピッキングが主な奏法で、スラップはしない。2フィンガーピッキングの際には、薬指・小指で弾いてない弦をミュートするなど、無駄な音を出さないための音処理は徹底している。
そして、一つのフレットに対しては1本の指で押さえる、4フレット4フィンガーのスタイルをベース界に広めている。テクニカルなプレイをする際には大変重要なテクニックであり、現代のベーシストの多くはこのような弾き方をしている。

また、ハーモニクスプレイも多用する。ベースにおいて大胆にハーモニクスを導入したのもジャコ・パストリアスの大きな功績である。ハーモニクスで構成されたPortrait of Tracyは大変美しい曲である。ピッキング・ハーモニクスも得意であり、ウェザーリポートのBirdlandはテーマをピッキング・ハーモニクスで弾いている。

コード弾きの多用も特徴である。ContinuumやビートルズのカバーであるBlack Birdなどでそのプレイは聞ける。

他には、手のひらを弦に叩きつけてパーカッシブな音を出すプレイ等も行う。

ジャコ・パストリアスはこれらの奏法を全て音楽的に用いるのが特徴である。けして奏法ありきのプレイはしない。あくまで自身の表現を拡張する手段としての奏法なのである。それは上述した、Portrait of Tracy、Birdland、Continuumを聞けばよく分かると思います。単一のテクニックをフィーチャーした楽曲であるが、テクニックのお披露目曲には全く聞こえない。あくまで、それらの楽曲を美しく奏でるために、必要に駆られてテクニックを使用したのだな、と感じさせられる。

グルーヴ

テクニックが注目されるジャコ・パストリアスですが、無意識下で他のベーシストへの影響が強いのはどちらかというとジャコのグルーヴである。

ジャコの速弾きをかっこいいと思っている人は、実は無意識下でジャコのグルーヴに惚れているはずなのである。というのも、上述したように、速弾きのテクニックだけであったら他にも超絶的なベーシストはいくらでもいる。

でも、なんでジャコ・パストリアスの速弾きに惚れてしまうかというと、彼のグルーヴから繰り出されるスピード感のある速弾きがかっこいいからだと思います。ジャコのフォロワーは非常に多いが、速弾きのフォロワーというよりは、ジャコのグルーヴのフォロワーがむしろ大半。ジャコのかっこよさはやはりグルーヴである。

R&B的なグルーヴに挟まれる16分の使い方が特に秀逸。ジャコ・パストリアスの16分はスピード感があり、ウェザーリポートの「8:30」に収録されているTeen Townを聞けばその異常なスピード感がわかるかと思う。

また、同時にまるで唄っているかのようなグルーヴも併せ持つ。

ジャコ・パストリアスは低音を支えるベーシストのグルーヴと、ボーカルのような唄うグルーヴ両方の側面を持っている。ベーシストの多くがフォローしているグルーヴであるので、ベーシストであれば必聴。

音処理も徹底しており、ミュートを効果的にベースラインにアクセントをつけるのにも使っている。

フレージング

ジャコ・パストリアスはテクニック、グルーヴ、サウンド、全ての面において革新的であった。本当に今でもジャコに影響を受けているベーシストだらけである。そしてフレージングもジャコの影響を受けているベーシストだらけである。

特にバッキング時のグレージングについては、ジャコは手癖を多用するのだが、その手癖があまりに印象的、そして汎用的、そしてセンスに溢れている。

手癖を多用するジャコなので、曲が違くても同様のフレーズが表れることはよくある。しかし、そのフレーズこそがジャコのかっこよさである。しかも、ジャコのグルーヴと合わさるとそのフレーズが何倍増しにもかっこよく聞こえるのである。

フランク・シナトラのボーカルラインをコピーしていたと語っているが、ジャコ・パストリアスはベースを弾く上でメロディを常に意識している。唄うことを意識している。だからこそ、バッキングに回ってもフレーズが唄っているのである。

ベースソロについても、ペンタトニックを主に使用するのだが、そのペンタトニックの使い方がセンスに溢れている。

月並みな言葉ですが、ジャコ・パストリアスのフレージングはセンスに溢れている。

フレットレスベース

ジャコ・パストリアスの特徴としては、やはりフレットレスベースを使用していたことであろう。フレットレスベースを使用しながらも、弾き方はまるでフレッテッドベースのような弾き方をし、ピッチは正確。

また、フレットレスベーシストはやたらにスライドを多用するベーシストが多いですが、ジャコ・パストリアスはピッチをごまかすようなスライドの仕方は一切しない。

唄っているベースが特徴のジャコ・パストリアスですが、唄っているようなニュアンスをつけるためにはフレットレスベースが適していたのでしょう。しかし、不自然な唄い方はしない。非常に自然なニュアンスでベースを唄わせるのがジャコ・パストリアスである。

エフェクター

ライブ時のソロパフォーマンス等では、デジタル・ディレイで擬似的なダブリング効果を再現することがある。一度弾いた音をループさせて、いくつかの音を重ねるパフォーマンスはジャコ・パストリアスのライブにおける一つのハイライト。

また、ソロパフォーマンス時にはディストーションもよく使用する。その際にはジミ・ヘンドリックスの「Third Stone From The Sun」からフレーズを借りて弾くのが定番。

バンドのアンサンブルの中でエフェクターを多用することはないが、ソロパフォーマンス時には上記のようにエフェクターを使いこなす。

 

とにかく革命的

ベース界の革命児は誰か?と聞けば、多くの人がジャコ・パストリアスの名前を挙げるかと思います。

おそらく今後、これほどの革命をベース界にもたらすベーシストは現れないのではと思います。というのも、ジャコ・パストリアスは既に完成されたスタイルで世にでてきたからです。

実際ジャコ・パストリアスが登場してからベース界で大きな変化はありません。基本的にジャコ・パストリアスの延長線上でベース界は発展しています。

恐らく今後もずっとジャコ・パストリアスのプレイはベース界に影響を与え続けるでしょう。

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