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Marcus Miller(マーカス・ミラー)「ドンシャリスラップ」

      2014/12/19

ドンシャリサウンドによるスラッププレイが特徴のベーシスト、Marcus Miller(マーカス・ミラー)

ジャコ・パストリアス
がベース界を大きく変革してからというもの、ジャズ・フュージョンのベース界では大きな動きはなかった。しかし、32分音符を多用したドンシャリサウンドによるスラップスタイルを引っ提げてシーンに登場したマーカス・ミラーが、動きのなかったベース界に旋風を巻き起こすことになる。

ポップス、R&B、ファンク、ジャズ、フュージョン、あらゆる音楽ジャンルに精通しており、全てのジャンルにおいて高水準のプレイを行う。それだけに超売れっ子のベーシストである。

マイルス・デイヴィスのベーシストとして起用され、その他にもデイヴィッド・サンボーン、ロバータ・フラック、チャカ・カーン、ドナルド・フェイゲン、ハービー・ハンコック、ルーサー・ヴァンドロス、渡辺香津美など、、、錚々たる面子である。この他にも数えきれないほどのミュージシャンと共演している。ソロ活動も成功している。

また、作編曲はもちろん、ベース以外ではギター、ピアノ、ドラムなども演奏することができ、特にバス・クラリネットはライブでも演奏するほどの腕前である。ちなみにプロデューサーとしても優秀。何でもできるため、”Jack of All Trades”という通名も持つ。

いちミュージシャンとしても大変高い能力を持つが、ベーシストとしてはベース史屈指の実力を誇る。全てが上手いベーシストであるが、特にベース界を大きく変えたのは彼のスラップスタイル。マーカス・ミラーのスラップサウンド・スラップフレーズは多くのフォロワーを生み出しており、その後のスラップスタンダードを作り上げたと言っても過言ではない。スラップベースはマーカス・ミラーが誕生してから大きく変わっており、スラップベースの歴史はラリー・グラハム達が支えた黎明期とマーカス・ミラー登場後という二つに分類ができると思います。それくらいの変革を与えています。

プレイスタイル

スラップベースが注目されがちのマーカス・ミラーですが、実際には全てのプレイが高水準であり、オールラウンダー。ただし、ベース界に変革をもたらしたという点で、やはりスラップベースが特筆すべき点であろう。

マーカス・ミラーのスラップベースの何がそれほど凄かったのか?

ジャコ・パストリアスもそうであるが、変革を与えるようなミュージシャンというのは往々にして、ある意味真似がしやすい。というよりは真似をしたくなるようなプレイスタイルと言った方が適切か。つまり、そのプレイヤーが登場することにより、新たなスタンダードスタイルが確立されるのである。

ジャコ・パストリアスが登場してから、ジャコ的なプレイスタイルをするベーシストが雨後の筍の如く現れた。それと同じことがマーカス・ミラー登場後に起こっている。マーカス・ミラーが登場してからというもの、彼のスラップベースをお手本にしたベーシストが星の数ほど現れたのである。

新しいプレイスタイルを提示すること自体は、いろいろなベーシストが行ってきているが、それをその後のスタンダードスタイルにまでしてしまうのが変革者。

マーカス・ミラーのスラップは、サウンド・フレージング・グルーヴ、全てがカッコ良かった。なんで自分が最初にこのプレイスタイルをしなかったのだろうか、と思わずベーシストが悔しがってしまうくらいに、カッコ良かった。

サウンド

’77年製フェンダー・ジャズベースを使うマーカス・ミラー。サウンドは低音と高音が強調された所謂ドンシャリサウンド。このドンシャリサウンドから繰り出されるスラップがその後のベーシストに大きく影響を与える。

サムピングによってバス・ドラムのような重いサウンドを出し、プルによってスネアのようなアクセントをつける。考えてみればこの2つを実現するためには、低音と高音を強調するドンシャリサウンドを導入するのは非常に合理的。だからこそ、このドンシャリサウンドはその後多くのベーシストに採用されたのだと思います。

ニュアンス

マーカス・ミラーの凄さは細かなニュアンスにもある。ドンシャリサウンドに加えてマーカス・ミラーは弦を低く設定している(と言われている)。

そのため、弦とフレットが擦れる音が入る入る。しかし、マーカス・ミラーはこの音を効果的にに活用する。指弾きで弾く時、強弱をつける際に弦とフレットが擦れる音を上手く使い分けるのである。

また、その他にも親指弾きなどでデッドな音を作り出したり、親指を使ったタッピングで独特なニュアンスをつけたり、オクターバー等のエフェクトをピンポイントで使ってフレーズを際立たせたり、、、、、細かいニュアンスをつけるための技術が他のベーシストと比べて圧倒的に多い。そして、そのことが、他とは一線を画する表現力に繋がっているのである。

フレージング

メロディを全部スラップで弾くという発想を流行させたのは間違いなくマーカス・ミラーであろう。ただし、メロディを全部スラップで弾いても軽くなり過ぎないのがポイントです。

マーカス・ミラーはソロアルバムでテーマのメロディを大体スラップで弾きますが、その際にも効果的に低音のサムピングを挟むことによって、グルーヴが失われないようにしている。

また、それ以外には32分のスラップフレーズがマーカス・ミラーの特徴。32分のオクターヴスラップを随所に挟み込むのがマーカス流ですが、この32分がフレーズに推進力を与える役割を持つ。

そしてベースソロ。マーカス・ミラーのベースソロにおける即興力は素晴らしい。

マーカス・ミラーは「ガイドポスト」という概念を自身のベースソロに採り入れている。これは、ある決まった小節に必ず事前に決めてある音(もしくはフレーズ)を弾くというものである。そのことにより、ガイドポストにしっかりと着地するようなフレーズを弾く必要が生じ、ベースソロに秩序がもたらされる。マーカス・ミラーのベースソロはとても即興とは思えないほどの完成度を誇りますが、このようにソロの構成をまとめるためのこだわりが関係しているのかもしれません。

ニュアンスにしてもそうですが、マーカス・ミラーは「神は細部に宿る」という言葉を体現するように、非常に細かいところまで妥協せずにこだわっているのです。

ちなみに指弾きでのメロディアスなソロも要注目。ペンタトニック主体で、ブルージィーなフレーズを弾きます。

グルーヴ

オールマイティーなマーカス・ミラーですが、個人的にはやはり「グルーヴ」の人。スラップテクニックに目が行きがちですが、グルーヴのないスラップだったら絶対にマーカス・ミラーはこれ程人気のではなかったと思います。グルーヴのないスラップほど聞いていて眠くなるものもありませんから。

マーカス・ミラーの凄さは結局はグルーヴ感覚に優れていることです。

そして、マーカス・ミラーのグルーヴの独自性は、グルーヴを自在にずらすことにあるかと思います。マーカスは音楽に応じて、タイトに弾いたり、微妙にグルーヴを後ろにずらしたり、逆に前にずらしたりします。それによって微妙なニュアンスを演出するのです。

マーカス・ミラーはスラップ等で高度なフレーズを弾くこともありますが、ヴィクター・ウッテン等の超絶ベーシストと比較すれば結構コピーしやすいフレーズを弾きます。ところがどっこい。コピーしてみればわかりますが、全く同じフレーズを弾いても、全くマーカスのようなカッコ良さにはなりません。

マーカス・ミラーの細かいグルーヴ感覚、細かいニュアンス付によってあのカッコ良さが演出されているのであり、ただ単にコピーしたところで全くマーカスっぽくはなりません。

まとめ

新たなスラップベーススタンダードを作り上げたマーカス・ミラー。当然、スラップテクニック等に目が行きがちですが、彼の凄さは細かいニュアンスや細かいグルーヴ感覚など、それ以外の部分にもある。

実際に彼の音楽を聞いて、感じてみてください。

 - ベーシスト

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